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『宮本武蔵』(吉川英治)

 新聞紙を丸めた剣なんかでも、 二本あると「二刀流!」なんつって強くなったような気がしていた子供時代。
 最近の子供は口にもくわえて「三刀流!」とかやってんでしょうか。 よだれで大変なことになりそうで、お母さん大変だなぁ。

 というわけで、二刀流と言えばこの人、宮本武蔵。 刀の作りの差もあるのかもしれないけど、海外では二刀流ってあんまり聞かないですね。 やっぱり難しいのかな。
 さて実在の人物であり、二天一流の開祖であり、画家としても高名な宮本武蔵。 フィクションも交えつつ、この武蔵の半生を描いたのがこの作品ですが、面白いよー。
 寡黙で強くて不器用な主人公。美形だけど冷酷なライバル。可憐なヒロインとのすれ違い。 トラブルメーカーの少年。日本のエンタテインメントの王道がギュッと詰まってる。 実在の人物を描いた作品を読んでると、よくもこう見てきたような嘘をかけるな、と思うんだけど、 面白いからまあいいか。
 同じ吉川作品でも、日本を舞台にしてる分『三国志』よりもずっと読みやすいです。ご一読あれ。
 一巻ごとに一言感想ネタバレ。
『地の巻』
 まだじたばたしてるから地の巻かな。武蔵はまだかなりの悪たれです。
『水の巻』
 流れはじめたから水の巻?  ム。とか言っちゃってすっかり寡黙な武者修行キャラです。 いきなりこんなに変わるとは……。 そして強くてストイックな主人公には少年キャラがつきもの。城太郎登場。
『火の巻』
 ついに佐々木小次郎登場。なんか必ず動物を連れて登場するんだね。
 そしてお杉最強伝説。この婆さんが戦闘に参加するとは思わなかったよ……。 格ゲーだったら飛び道具キャラとして活躍してくれそうです。
『風の巻』
 この巻ではじめてバトルらしいバトルが! 有名な一乗寺下り松での戦闘です。 ライトファンタジーなんかだと100人や200人あっという間に倒すけど、 これはリアリティがあるなぁ。
 そして小次郎のイヤなやつっぷりが発揮されてきました。又八のことは放っておきたい。
『空の巻』
 もっと必死にお通を探せよ! と思ったのは僕だけではないはず。
 それから唐突に二番弟子・伊織登場。なんか、城太郎に比べて随分優遇されてない?  ずるいんでない?
『二天の巻』
 ついに二刀流、開眼!?  ということよりも、久々に登場した城太郎が立派な不良息子(本人自覚なし)になっていたことのほうが ショッキング。やれやれだぜ。武蔵は育て方を間違えたねぇ。
『円明の巻』
 ついに完結。まさに大団円という感じ。いままでのキャラが総登場。 お通の件にも決着がついて、それまでちょっとイライラしたりもしてたんだけど、 なんかホロっとしちゃったりして。
 そして、盛り上げて盛り上げて、舟島での決闘。 巌流島っていうのは後からついた名前なんですね。負けた小次郎の名がついたっていうのが 面白いところだけど。それから、この戦いでは二刀流じゃなかったのも驚きました。 終わり方もここで終わるしかないってところで終わって、堪能しました。

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