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『本所深川ふしぎ草紙』(宮部みゆき)

 電車の中、いつものように本を読んでいると、隣りに座っていた おばあちゃんが話し掛けてきました。
「いまなんて駅でしたかね。わかんなくなっちゃって……」
「いま日吉を出て、次が武蔵小杉ですよ」
「あら、そう、急行は速くてびっくりしちゃうわねぇ」
「そうですねぇ。最近は特急なんかもできましたしねぇ」
 思わず相槌を打つと、ばあちゃんは目を輝かせて話し出しました。
「あなた、それ何読んでるの?」タイトルを見せると「読めない。何て書いてあるのかしら?」
「え……と、『本所深川ふしぎ草紙』っていう本で──」
「本所深川って、江戸の? へえ! あなたそういうのが専門なの?」
「いや、別に専門とかじゃなくて──」
「なんて人が書いてるの?」
「宮部みゆきって人なんですけど──」
「へえぇ。偉いわねぇ。下町のねぇ」
 何が偉いのか全然わかりませんが、電車の中、大声で読んでる本を発表させられて恥ずかしかったっす。 変な本読んでなくてよかった。
 近江屋藤兵衛が死んだ。 その知らせを、彦次は蕎麦の湯が煮えたぎる釜の前で耳にした。 聞けば、本所一帯を仕切る岡っ引きの茂七は、娘のお美津が怪しいとにらんでいるらしい。 しかし彦次は、お美津を知っていた。お嬢さんは、そんなお人じゃない──。 かつて世話になったお美津のため思い悩む彦次だったが、 蕎麦屋の主・源助の言葉から、藤兵衛の葬儀に見かけた不審な娘の姿を思い出す。 彦次は茂七のもとを訪ね、全てを語った。茂七から知らせが入ったのは、それから半月もたたないある日だった──
 なまじ おばあちゃんに分かりそうな本だったのがいけなかったのでしょうか。いや、別にいけなくはないか。
 とにかく、おばあちゃんにも分かるように説明すると、 江戸の下町・本所に伝わる七不思議── 『片葉の芦』『送り提灯』『置いてけ堀』『落葉なしの椎』『馬鹿囃子』『足洗い屋敷』『消えずの行灯』── それらになぞらえた七つの物語を収めた短編集です。
 『初ものがたり』の茂七親分も登場して、あいかわらずの人情の分かる親分っぷりを発揮してくれてます。 『落葉なしの椎』のラストなんて泣かせる。くー。
 さらに『置いてけ堀』では何だか『巷説百物語』(京極夏彦)ばりの活躍をしてくれちゃって、 『巷説──』を読んだばかりのぼくとしてはいろいろ面白かったんすよ、おばあちゃん。
 というわけで最後ちょっとネタバレでおしまいです。
 一番印象に残った台詞は『足洗い屋敷』で、おみよがお静に言った台詞。
「ねえ、おっかさん。おっかさんは、子供の頃に、汚い足をいっぱい洗ったんでしょう?  丁寧に、綺麗に洗ってあげたんでしょう? だから、たくさんの福がついたのよ。 これからはたくさん良いことばっかりがあるはずなのよ。 また足を洗う夢を見たら、そういうふうに思ったらいいわ。ああ、これは、幸せがやってくるしるしだ、って」
 くー。泣かせる。こんなけなげなこと言う子供をアナタ裏切れますかどうですか。 それでも裏切る大人はいるわけで、そういう人物を描くところが、描いても嫌な読後感にならないところが、宮部みゆきらしいっす。

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